「大家業」の先に何を見出す?賃貸経営の成功は「目的」ではなく「生きがい」のために

1949年、東京都生まれ。東京都文京区在住。代々地主の家系に生まれる。某旅行会社に勤務する一方、相続と自身の結婚をきっかけに大家の道へ。一般社団法人日本不動産経営協会(JRMA)元代表理事。ファミリータイプ25室、戸建て4棟、店舗2棟の他、太陽光パネルを所有。 現在、自身の住むマンションの1階にて4ヶ月限定の小さな商店街を開催している。
代々千駄木の地に根付く地主の家系に生まれ、幼い頃から自ずと「いずれ自分は家を継ぐんだ」と感じながら育ちました。実家は戦後から質屋を営んでいました。質流れした品物を保管していたのか、家には3階建ての大きな蔵があり、悪さをすればいつもそこに放り込まれていましたね。幼心には恐ろしくも、大人になった今では懐かしい思い出です。
その後、実家の下に地下鉄が通ることが決まり、工事の影響で家の場所を移すことになった際、戦後から続く質屋の看板を下ろしました。私が大家になったのは同時期で、結婚を迎え、実家の土地に自宅を建てたいと考えたときです。親戚からアドバイスを受け、ただ自宅を建てるのではなく、賃貸併用住宅を建て、その家賃収入で建築費を払っていくことにしました。実家でも質屋を営んでいた頃からアパート経営を行なっていたので、大きな抵抗は無く「大家業」を開始しました。基本的には不動産会社と一般媒介契約を結び、自分でもチラシを作り、近くの不動産会社をすべて回って、入居付けのお願いをしました。
私が相続することになったのは、今から20数年前。父が他界し、3億9000万の相続税が課されました。当時、家にあった現金は300万程度。すべて支払うために土地を300坪ほど物納しました。父は相続税対策をほとんど行なっていませんでした。長く受け継がれてきた土地は不明瞭な部分も多く、物納するにも分筆や測量を行なう必要があり、当時は苦労しましたね。自分の子どもたちに同じ苦労をさせないためにも、少しずつ相続税対策を行なっています。法人化や遺言状など、これからさらに勉強していかないといけませんね。
一般社団法人日本不動産経営協会(JARMA)との出会い、そしてそこで行なわれた情報交換や同じ地域にある業者との繋がりのおかげで、入れ替わりはあれど全棟満室で稼働しています。また、大家になって何十年と経ちますが、今もなお不動産会社をまわることを欠かしません。例え満室であっても2~3ヶ月に1回は顔を出し、旅行に行けばお土産を買っていきます。「千駄木の2LDK」といえば私を真っ先に思い出してもらえることが、安定した賃貸経営に繋がっていると思います。
サラリーマンから専業大家になることを目標にしている方は、きっと多くいらっしゃることでしょう。しかし、専業大家になった「あと」のことまで考えなければ、せっかく目標に達しても「生きがい」を見失ってしまうかもしれません。専業大家になってからも人生は続きます。やはり人は「社会に役立っている」ということを実感出来なければ、自分の価値を見出しにくいのではないのでしょうか。生きていく上で自分を支えていくために、一体何が必要なのか。私は生まれ故郷でずっと育ってきたこともあり、加えて行政に身を置く友人が多く、地域の仕事をお願いされることが多々ありました。元々父が町会長を務めていたことも起因するのかもしれません。生まれ育った場所に貢献する機会に恵まれ、私自身そこに「楽しさ」と「やりがい」を見出しました。
町会の役員といえば「大変そう」と思われるかもしれません。一体何が楽しいのかと聞かれれば「仲間」ができることです。趣味の仲間と違う、一緒に苦労する仲間ができる。苦労を共にした仲間は、結束が強い。ただ交流を広げようと、どこかのコミュニティの飲み会に参加しても、異業種交流会で名刺交換をしても、きっとすぐに忘れてしまいます。共に汗をかき苦労した人のことは、絶対に忘れません。歳を重ねた今なおそうした仲間ができることは、あまりないものだと思います。
いま、地域でやっていて一番楽しい取り組みは「子ども食堂」です。母子家庭や両親が共働きの家庭が増えてきた今、その家の子どもの多くは1人で夕ご飯を食べています。もしくは「これで食べなさい」とお金だけ渡されています。それは良くないという考えから、みんなで夕ご飯を食べようという食堂を月に2回、町会会館で開いています。集まったみんなで一緒に夕ご飯を作って食べるという企画ですが、なかなか地域に役立っていますよ。運営は町会が全面的に支援してくれています。

こうした活動を行なうことで、地域の人たちと仲間になれる。また地域の人たち同士も知り合うことができる。それも大人も子どもも関係なく、交流することができるんです。この輪を広げていくことで、地域の大人がちゃんと子どものことを知っていて、いつでも声がかけられるような、そんな社会にしていきたいと思います。
こうして私は「地域貢献」を1つの生きがいに位置付けました。地域が繋がるようなことができれば、大家にとっても良いことがあります。交流の多い町は治安が良く、外部から悪い人間が入ってきません。常にみんなが挨拶し合うような町へ悪いことをするような人間がやってきても、変に目立ってしまいますから、自然と犯罪が減っていきます。安心して住める町は需要が高まり、賃貸住宅の価値が上がる。結果、家賃をあげることも可能になるのです。
「生業」と「生きがい」がうまく組み合わされば、これ以上楽しいことはありません。みなさんにとっての「大家業」と「生きがい」を今一度振り返ってみてください。人それぞれ違って当然ですが、果たして自分なりの答えを出せるのか。答えを明確にすることが、成功への大きな一手です。
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